嫌なことがあると、海が見たくなる。だけど、明日も仕事だし、そんなにたくさんの時間があるわけでもない。そんな時は、山陽電車に乗る。山陽電車は、駅を降りたらすぐ海、という駅が多い。
電車の中では、のんびりと音楽を聴きながら、仕事のこと、これから行ってみたい場所について考えたり、調べたりする時間。お昼の山陽電車に乗れば、たいてい座ることができる。
今回は、中八木駅という小さな駅で降りた。山陽明石駅から西へ4つ目の駅で、普通電車しか停まらないローカル感漂う駅だ。地元の人々が主に利用するこの駅は、観光地の賑やかさとは無縁で、静かな駅である。

中八木駅で降りて海の方に向かうと、住宅地の静かな道が続く。その道を抜けると、八木遺跡公園という公園にたどり着く。この公園は、のんびりと犬を散歩させる人々、ジョギングを楽しむ人たち、地元の子どもたちが遊ぶ姿が見られ、観光地とは違う、日常の風景が広がっていた。

八木遺跡公園の名前には理由がある。実はこの近くで、明石原人やアカシゾウと呼ばれる化石が発見されたのだ。それらをモチーフにした公園のデザインは、歴史と自然が融合した独特の魅力を持っている。

公園の端には浜辺へと降りる階段があり、その先には小さなあずまやが立っている。
あずまやから見渡す播磨灘の海は、穏やかでとても美しい。ちょうど夕方に訪れたこともあり、空がオレンジ色に染まり、波音が心地よく響いていた。

砂浜に打ち寄せる波のリズムに耳を傾けながら、ただぼんやりと過ごす時間。それは、忙しい日常から解放される瞬間だった。

この海岸にはウミガメもやってくるのだそうだ。これほど、大阪や神戸から近い場所でもウミガメがいるということに驚いた。
八木遺跡公園にちなんで語られるアカシゾウのエピソードもまた、興味深いものだった。アカシゾウの化石は、中学生が発見したという。その少年は6年間もの間、1人で掘り続け、最終的に97点もの化石を発見したのだそうだ。少年の情熱と根気強さに驚かされると同時に、こうしたエピソードに出会えるのも、適当な駅で降りて歩いてみる楽しさの一つだと感じた。
今回の散策で、改めて山陽電車の魅力を実感した。駅ごとに異なる個性を持つローカルな路線は、どこで降りても何かしらの発見があり、まるで小さな冒険をしているような気分になる。そして、海沿いという立地がもたらす自然の美しさは、心を癒やしてくれる。
MAP
八木遺跡公園
アクセス:山陽電車中八木駅徒歩5分
開園時間:24時間