
大阪府茨木市に2023年11月26日、ちょっと変わった名前の複合文化施設「おにクル」がオープンした。図書館にプラネタリウム、コンサートホール、カフェ、屋上広場まで備えた、地上7階建ての大型施設だ。なかでも注目したいのが、「公園のような図書館」をコンセプトにした「おにクルぶっくぱーく」。図書館といえば、静かに本を読む場所。おしゃべりは控えめに、というのが一般的なイメージだ。ところが、おにクルは少し違う。館内には子どもたちの声が響き、別の階からは人々の活動する音が聞こえてくる。図書館の本を持って、好きなフロアで読書を楽しむこともできる。図書館なのに、静まり返っていなくてもいい。そんな新しい図書館のあり方を提案する、茨木の注目スポットだ。
怖い鬼も思わず来たくなる?「おにクル」の名前に隠された物語

まず気になるのが、「おにクル」という名前。いったい、何が来るのだろう。実はこの名前、茨木市内に住む当時6歳の男の子が考えたもの。茨木の街で親しまれている鬼のキャラクター「いばらき童子」を見て、「怖い鬼さんも楽しそうで来たくなっちゃうところ」という思いを込めて名付けたという。約2,700件の応募の中から、市民投票などを経て選ばれた。いばらき童子のモチーフとなった茨木童子は、茨木にゆかりのある伝説上の鬼。そんな鬼まで呼び寄せてしまうほど楽しい施設にしようというわけだ。普通なら「茨木市文化交流センター」などと名付けられそうなところを、思い切って「おにクル」。市の新しいランドマークの命名を、6歳の男の子が担った。名前の由来からして、なかなかユニークな施設である。
図書館なのに、おしゃべりも聞こえてくる。静寂だけにこだわらない新しい読書空間
おにクルの図書館「おにクルぶっくぱーく」は、5階と6階を中心に、2階から7階まで本が配置されている。特徴的なのは、図書館が建物の中で独立しているのではなく、さまざまな施設と緩やかにつながっていること。中央には大きな吹き抜けがあり、各フロアをつなぐ「縦の道」が設けられている。別の階で活動する人たちの声や音が聞こえてくるのも、この建物ならでは。従来の図書館が静けさを大切にしてきたとすれば、おにクルは人々の活動や交流も大切にしている。もちろん、どこでも大声で騒いでいいという意味ではない。静かに読書や勉強をしたい人のための場所もある。ただ、図書館全体を一律に静寂で包むのではなく、それぞれの過ごし方を受け入れる。「静かにしなさい」と言われる場所から、「自分らしく過ごしてください」と迎えてくれる場所へ。図書館の常識が、少し変わりつつあるのかもしれない。
本を持って館内を散歩。図書館が建物のあちこちに出張中
おにクルでは、図書館の本を館内の好きなフロアへ持っていって読むことができる。これも面白い仕組みだ。普通の図書館では、本を選んで閲覧席に座る。しかし、ここでは気に入った本を手に、別の階へ移動することもできる。2階には子ども向けの絵本、7階には天文や宇宙に関する本など、それぞれのフロアの特徴に合わせて書籍が配置されている。本を探しながら建物を歩く。建物を歩いているうちに、気になる本に出会う。どちらが目的だったのか、途中で分からなくなりそうだ。図書館を散歩する。そんな楽しみ方ができるのも、おにクルの魅力である。
図書館の最上階には宇宙がある。プラネタリウムと屋上広場も見逃せない
おにクルは図書館だけの施設ではない。7階には「きたしんプラネタリウム」があり、デジタル映像で星空や宇宙の世界を楽しめる。さらに同じフロアには、人工芝が敷かれた屋上広場も。本を読んだ後にプラネタリウムで宇宙を旅し、最後は屋上で空を眺める。なかなか充実したコースではないだろうか。しかも、屋上広場は普段、自由に過ごせるフリースペースとして開放されている。図書館に来たつもりが、気づけば屋上でのんびりしている。本を読むために来たのに、最後は空を眺めて帰る。そんな予定変更も、おにクルなら歓迎してくれそうだ。
図書館にホール、カフェ、芝生広場。もはや何の施設なのか分からない

おにクルには、約1,200席の大ホールや多目的ホール、子どもの遊び場、カフェ、市民活動スペースなどもある。建物の前には芝生広場が広がり、イベントや憩いの場として利用されている。コンサートを聴きに来る人。子どもと遊びに来る人。カフェでひと休みする人。そして、本を読みに来る人。訪れる理由は人それぞれだ。一般的な複合施設なら、それぞれの機能が独立していても不思議ではない。しかし、おにクルは大きな吹き抜けで各フロアをつなぎ、異なる活動が自然に交わるように設計されている。市の広報でも、この建物を「立体的な公園」と表現している。図書館に行く。公園に行く。カフェに行く。全部まとめて、おにクルに行く。施設のジャンルをひとつに決める必要は、もはやなさそうだ。
本を借りなくても楽しめる。茨木の新名所を「図書館観光」してみよう

図書館を観光する。少し変わった発想に聞こえるかもしれないが、最近の図書館には、わざわざ訪れたくなる建築や空間が増えている。おにクルも、そのひとつだ。大きな吹き抜けを見上げたり、館内を散歩したり、屋上広場でのんびりしたり。本を借りる予定がなくても、十分に訪れる理由がある。そして、そんなふうに過ごしているうちに、思いがけず読みたい本に出会うこともあるだろう。図書館は、必ずしも本を読むことを最初の目的にしなくてもいいのかもしれない。鬼まで来たくなる場所なら、人間が用事もなく訪れたっていい。茨木の「おにクル」は、そんな気持ちにさせてくれる新しい街の居場所だ。
スポット情報
茨木市文化・子育て複合施設 おにクル
所在地:大阪府茨木市駅前3丁目9番45号
アクセス:JR茨木駅・阪急茨木市駅から徒歩約10分
図書館:おにクルぶっくぱーく(主に5・6階)
図書館開館時間:9:30〜21:00
休館日:毎月第2・第4月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料:無料(一部有料施設あり)
公式サイト:https://www.onikuru.jp/
※施設ごとに利用時間や料金が異なります。訪問前に公式サイトをご確認ください。
