待ち合わせは、広場で。

なんば駅を出たら、ちょっと立ち止まってみる。目の前にあるのは、高島屋大阪店のレトロな建物。その前には、ぽっかりと空いた大きな広場。なんば広場だ。少し前まで、ここは車が行き交う、なんとも慌ただしい駅前だった。それがいまでは、椅子とテーブルが並び、人が歩き、座り、話をしている。なんばのど真ん中に、余白ができた。それだけのことなのに、街の景色はずいぶん変わった。
駅前なのに、急がなくていい。
駅という場所は、だいたい急いでいる。電車に乗る。誰かと待ち合わせる。次に行く場所をスマホで調べる。つまり、いつも「次」がある。でも、なんば広場では、その「次」をちょっと忘れてもいい。椅子に座って、行き交う人を眺める。近くでコーヒーを買ってきてもいい。別に何もしなくてもいい。駅前なのに、のんびりできる。これって、けっこう贅沢だ。
なんばの特等席。
広場に座ってみる。目の前には、南海なんば駅。その向こうには、なんばの街。買い物へ行く人。待ち合わせをしている人。スーツケースを引く旅行者。これから飲みに行く人。なんばという街は、座って眺めているだけでも面白い。ただのんびりとコーヒーでも飲みながら、それを眺める。
夜になると、もう少しいい。


できれば、夜にも来てみたい。街に灯りがついて、広場の雰囲気が少し変わる。昼間のなんば広場が「街の休憩所」なら、夜は「もう少しだけ帰りたくない人の場所」。友達とごはんを食べたあと、「そろそろ帰ろうか」と言ったのに、話が終わらない。もう一軒入るほどでもない。そんなときは、ここでいい。椅子に座って、あと10分。その10分が30分になっても、まあいいか。
目的地じゃない場所を、目的地にする。
有名な観光スポットがあるわけじゃない。絶景があるわけでもない。入場料もない。なんば広場にあるのは、椅子とテーブルと、大阪の街。でも、それで十分なのかもしれない。駅を出て、「さて、どこへ行こう」と考える前に、ちょっと座る。あるいは今日は、どこにも行かない。なんばへ行って、なんば広場でのんびりする。そんな休日があってもいい。駅前にできたのは、広場だけじゃない。僕らが何もしなくていい、小さな余白なのかもしれない。
Information
なんば広場
アクセス:南海難波駅前すぐ

