ひと駅手前で、降りてみる。

山陽電車で垂水へ向かう。でも今日は、ひとつ手前の「東垂水」で降りてみる。大きな商業施設もない。
有名な観光スポットがあるわけでもない。小さな駅を出て、振り返る。すると、その向こうに海が見えた。駅と、電車と、海。それだけで、もう降りてよかった気がする。
何もない駅が、いい。

垂水駅はいつも賑やかだ。買い物をする人がいて、バスが走っていて、駅前にはお店が並んでいる。でも、たったひと駅離れた東垂水はずいぶん静か。小さな駅舎。細い道。ときどき聞こえてくる電車の音。時間まで、ちょっとゆっくりになったような気がする。こういう駅で降りるのも、たまにはいい。
駅から1分の展望台。
駅から少し歩くと、小さな公園がある。東垂水展望公園。名前に「展望」とついているけれど、大きな展望台があるわけじゃない。あるのは、崖の上の小さな公園。でも、そこからの景色がいい。眼下をJRと山陽電車が走っていく。その向こうには海。さらに遠くには、明石海峡大橋。電車が好きなら、たぶんずっと見ていられる。電車に興味がなくても、たぶんずっと見ていられる。
今日の特等席は、ベンチ。

公園の端に、ベンチがある。座ってみる。目の前には海。その下を、ときどき電車が走っていく。特急列車が来た。貨物列車が来た。山陽電車もやって来た。そして、また静かになる。ここでは電車が、時計の代わりみたいだ。一本通り過ぎるたびに、少しだけ時間が進んでいく。
コーヒーが一本あればいい。
こういう場所へ来るときは、予定を詰め込まない方がいい。コンビニでコーヒーを一本買ってくる。ベンチに座る。海を見る。電車を見る。スマホは、まあポケットに入れておこう。何か面白いことが起こるわけじゃない。でも不思議と、退屈もしない。何もしない時間というのは、案外こういう場所でしか見つからない。
目的地じゃない駅へ。
東垂水駅で降りる理由なんて、以前はなかった。垂水へ行くなら、そのまま垂水まで乗ればいい。でも、目的地じゃない駅で降りてみると、そこにはちゃんと、その駅だけの景色があった。海が見えて。電車が走って。ベンチがひとつある。それくらいでいい。今日は、ひと駅手前で降りてみよう。予定になかった場所の方が、のんびりできることもある。
Information
東垂水展望公園
アクセス:山陽電車東垂水駅徒歩1分

